交通事故では健康保険は使えない?

交通事故では健康保険は使えないんですよね?と聞かれることがあります。
しかし、これは誤解です。使えます。
たしかに、交通事故のような不法行為に基づく損害賠償請求というのは、損害の公平な分担という発想から、加害者が被害者に対して賠償することを基本としています。
したがって、交通事故によって生じた傷病の治療費についても、加害者(実質的には加害者が加入する任意保険会社)が負担するのが原則であり、健康保険を使う「必要」はありません。
そのため、交通事故で加害者が加入する保険会社が治療費を支払うような場合、病院も自由診療で診療を行うことが多く、健康保険を使わないことが圧倒的に多いといえます。

しかし、冒頭に述べたように、健康保険を使うことはできます。

健康保険法も、第三者の行為による傷病の場合に健康保険が使えることを前提とする求償規定を置いています(健康保険法57条)。
健康保険を使う場合、第三者等の行為による傷病届出等の届出をする必要があります。
このように、交通事故の場合であっても健康保険は使うことができます。
しかし、病院にとっては点数も自由に決められるため、自由診療での治療をしたいという意向があるでしょうし、加害者側も保険会社が自由診療での支払いに応じるのであれば特にそれを問題とはしませんが、被害者としては注意が必要な場合があります。
最も分かりやすいのが、被害者に一定程度の過失割合が認められる場合です。
たとえば、被害者に4割の過失が認められる事案で、自由診療での治療費が200万円だった場合、80万円(200万円×0.4)部分については、被害者の負担となるのです。
つまり、先に保険会社が200万円を病院に支払ったような場合には、後々、慰謝料等の他の損害から80万円が引かれることになります。保険会社が全額払ってくれているからと安心していると、示談の段階でとんでもない不意打ちを食らう結果になりかねません。
この点、健康保険を使えば、治療費を圧縮することができます(単純に3割負担になるというだけでなく、点数も変わるので、場合によっては被害者の負担が10分の1程度になることもあります。)。
そうすると、圧縮した分だけ、被害者の負担も圧縮され、結果的に被害者の手元に残る金額が増大します。

したがって、被害者側に過失があるような場合で、かつ人身傷害保険がないような場合(人身傷害保険についての詳細は「人身傷害保険とは」をご覧ください。)は、健康保険を使うことを積極的に考えて良いと思います。
ただ、健康保険を使う使わないで医師と揉めるのは得策ではありません。
交通事故の損害賠償で医師の協力は必要不可欠ですから、どうしても必要性が高い場合以外にむやみやたらと健康保険の適用を振りかざすのは控えた方がいいかもしれません。

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