会社員が終業後に通院しているとしても残業代に事故前との大きな変動はない等を理由に休業損害を否定した事例

神戸地裁:平成25年2月25日判決(自保ジャーナル1900号132頁)

判決要旨

① 38歳男子会社員の休業損害算定につき、5ヶ月余に50回通院も、「原告は、常に夜遅くまで仕事をしなければならない状態ではなかったといえる上、本件事故前の2月及び3月の残業代が4万6,120円であるのに対し、通院回数の最も多い4月の残業代も4万8,426円と同程度であることからすると、通院時間の大半が午後6時、7時であることを考慮しても、通院により原告の残業代が減少したと推認することはできない」として、「休業損害0円」と認定した。
② 原告の症状固定につき、「当初の通院期間が約5ヶ月であるところ、その後約4ヶ月間、土曜日も含めて全く通院しておらず、B整形外科以外の病院にも通院していないことからすると、この通院中断は治療の中止と同視し得る」として、5ヶ月余の症状固定を認定した。

コメント

①については、要するに、「通院時間が終業後の午後6時、7時であったということから、その分残業ができなかったのでそれに見合う残業代を支払え」という原告の請求を認めなかったというものです。たしかに、終業後に通院しなければならないことで本来やるべき残業ができず、本来得られるべき残業代が得られなかったということは一般的にありえます。
しかし、本件では、事故前2か月間の残業代と事故後最も通院の多い月の残業代に有意な差がなく、結局、「本来やるべき残業ができなかった」という立証に失敗しています。仮に、事故前2か月間と事故直後の通院最多月の残業代に有意な差がないとしても、「本来やるべき残業ができなかった」という点が立証できれば、休業損害として認定されたということは十分にありえます。たとえば、事故前にもっと残業代が多い月があったことや、事故時の職務内容の詳細、会社の協力を得て「やるべき残業」があったこと示す等の方法がありえますが、本件ではそのような事情が十分ではなかったということでしょう。
そうであれば、休業損害を認めないという結果は妥当なものと考えます。

②については、通院期間に4か月の空きができてしまった点について、最初の通院のみを事故と因果関係のある治療期間であると判断したものです。約4か月もの間まったく通院していないというのは、治療の中止とみなされても仕方がない部分があり、この裁判所の判断も妥当なものだと考えます。

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