赤進入の被告自転車を手前で発見できたとして原告二輪車の過失を15%と認めた事例

神戸地裁:平成25年1月24日判決(自保ジャーナル1900号85頁)

判決要旨
夜間における原告自動二輪車と被告自転車の衝突の過失割合につき、赤信号無視自転車の被告に対し、「原告についても、被告自転車を実際に気付いた地点よりも手前で発見することができたものと認められ、被告自転車が足踏み式自転車であり、原告車が自動二輪車であることを考慮すると、原告にも、本件交差点に進入するに当たり、安全確認不十分のまま進行したという若干の過失があるというべきである…過失割合は、原告15%に対し、被告85%と認めるのが相当である」と認定した。

コメント
東京地裁平成25年1月24日判決とほぼ類似の事故形態について、ほぼ同様の判断を下した判決です。
自動二輪車に過失を認める理由付として、東京地裁の判例と異なり、「被告自転車が足踏み式自転車であり、原告車が自動二輪車であることを考慮すると」という一文を入れ、被告自転車が原告と比して交通弱者であることを正面から考慮している点が特徴的です。
しかし、「赤信号を無視して進行してくる車両はない」という最も基本的な交通ルールを信頼して交差点に進入しても、実際に赤信号を無視して進行してきた車両と衝突すれば「安全確認不十分のまま進行したという若干の過失がある」と言われるのではたまらないというのが素朴な感覚ではないでしょうか。ただし、過失割合を類型化した別冊判例タイムズ16号では、青信号直進四輪車と赤信号直進自転車の出会い頭の事故について、20:80と定めているので、本件裁判所や上記東京地裁が明白に不合理な認定をしているわけではありません。しかし、上記のような感覚からすると、やはり裁判の認定は四輪や自動二輪に対しては非常に厳しい(逆にいえば自転車や歩行者には優しい、そして自転車や歩行者が重傷となることが多いことを考えれば、そのような傾向の方が被害者救済に資しているという側面はあるのですが)と感じます。

なお、本筋ではないですが、この件は実は原告と被告は裁判前に示談を成立させていたました。加害者である被告が、真実は賠償保険に加入してたのですがこれを利用できることを知らないまま原告に対し「保険は加入していない」旨を伝えて示談したというものです。当然、この示談の有効性が争われました。この点について、裁判所はこの示談は保険が使えないという点において動機の錯誤があり無効であると判断しています。

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