捜査段階の供述を変えて本人尋問には出廷しない被告は「卑怯な態度」で弁護士費用を請求通り60万円認めた事例

横浜地裁:平成25年4月25日判決(自保ジャ1901号134頁)

判決要旨
① Xは頸椎捻挫等で、通院「期間としては、102日にすぎないが、本件事故は、Yが運転中に、助手席から降りた犬を席に戻そうとして、ハンドル操作を誤るという重大な過失により、何の落ち度もないXに傷害を負わせたものであるから、この点を考慮して、Xの傷害に対する慰謝料は、150万円とするのが相当である」と認定した。
② Yは、「捜査段階では、Y車が中央線を越えてB車に正面衝突し、これにより後方に押し出されたB車がX車に衝突したことを認めていた」が、本件訴訟では、「X車がB車に追突したと主張して、Xらの主張を争っただけでなく、Y自身は、本人尋問の期日に、正当な理由なく出頭しないという卑怯な態度に出たこと」から、Xらは、「弁護士に依頼して本件訴訟を追行する必要が高かった」として、「弁護士費用のうち、Yが負担すべき額は、Xらの請求額である60万円とする」と認定した。

コメント

①について、傷害慰謝料は通常、通院期間や実通院日数を考慮して額が認定されるところ、事故原因となった被告の過失の重大さを考慮し、150万円と認定している点が特徴的です。なお、原告は、上記のような被告の重過失のほか、刑事裁判の場で言っていることと異なる主張をして保険会社もこれを鵜呑みにして原告の過失が大きいなどといって治療費の内払いをしなかったことなども併せて主張し、傷害慰謝料175万円の請求を立てていました。ただし、原告はこの通院加療を終えた後は整骨院で施術を続け、症状固定と診断されたのは6か月以上経過した後でした。しかし、6か月強の通院をしていたと考えても通常の傷害慰謝料は90万円程度ですから、1.5倍ほどの傷害慰謝料が認定されたことになります。

②については、裁判所の損害認定額が既払金を除き150万円程度の事案であるにも関わらず原告の請求額通り60万円の弁護士費用が損害として認められている点が特徴的です。通常、裁判においては、既払金を除いた損害の1割程度を損害の対象となる弁護士費用とみますので、上記の被告の態度がかなり裁判所の怒りを買っていたことが窺われます(尋問にも出てこないというような不誠実な対応をしているわけですから裁判所が怒るのも当然でしょう。)。

コメントを残す

サブコンテンツ

このページの先頭へ