慰謝料には3つの基準?

交通事故の損害賠償(特に慰謝料)の額には大きく3つの基準があるといわれることがあります。3つとは、裁判基準、任意保険会社基準、自賠責基準の3つです。

しかし、正確にいえば、このうち法定されている基準は自賠責基準のみです。自賠責基準とは自賠責保険で支払われる慰謝料等の基準のことをいいますが、自賠責は最低補償を行う社会給付的色彩の強い保険ですから、その基準も低めに設定されています。
他方で、裁判基準は、これまでの裁判例の集積により導かれる基準であり、3つの基準の中では最も高額な基準です。裁判基準といっても、地方により微妙なズレがあります。裁判基準の書かれた本として、

  1. 赤い本
  2. 緑の本
  3. 黄色い本
  4. 青本

という4つの代表的な書籍があります。赤とか緑とかふざけているわけではなく、それぞれの書籍の表紙の色から一般的にそう呼ばれているものです。

これらの本の違いは、どの地方の裁判所が用いる基準であるかという点にあります。具体的には、赤い本は東京地裁ほか、緑の本は大阪地裁ほか、黄色い本は名古屋地裁ほかで用いられているものです。

なお、青本というのは、上記の各本が地方版的意味合いを持っているとするならば全国版的な意味合いがあり、慰謝料も幅を持った記載がされています。

ただし、多くの地方裁判所は赤い本を基準としています。

いずれにしても、これらは裁判例の集積によるものであり、実際の裁判ではかなり強い基準として作用します。したがって、その意味では裁判基準も法定基準に近い強さを持っているといっても過言ではありません。

他方で、任意保険会社基準というのは、任意保険会社がそれぞれで自主的に作り出した基準であり社内規定的な意味合いしかありません。しかし、弁護士に依頼していない被害者に対しては、保険会社は、任意保険会社の基準を持ち出して慰謝料を計算し、示談を求めてくるのが通常です。

慰謝料の額は、裁判基準>任意保険会社基準≧自賠責基準、ですから、任意保険会社の基準で示談をしてしまうと、本来受け取れるはずの慰謝料が受け取れないことになりかねません。

弁護士が被害者の代理人となると、さすがに任意保険会社も裁判基準を前提とする提案をしてくるのが通常ですから、ある程度の通院をしている方か弁護士費用特約に加入している方は弁護士に依頼した方が手元に残る金額が多くなることが圧倒的に多いといえます(弁護士費用特約について、詳しくは「弁護士費用特約」をご覧ください。)。

私が、事故に遭った方がまず弁護士に相談すべきであると考えるのは(「事故に遭ったらすぐ相談」参照)、こういった事実をまず知って欲しいという側面もあります。

保険会社も営利企業ですから、当然のことながら利益を出すことが究極の目的であり、利益を出す最も有効な方法は保険金の支払額を抑えることにあります。
したがって、どれだけ保険会社の担当者が良い人であっても、保険会社は決して被害者の味方ではなくあくまで加害者側の損害賠償交渉の代行を行う立場にあるということを認識して臨まなければいけません。

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